現状・課題分析
1-1.人口動態から見た千葉市の「強み」と「弱み」
(1)人口減少の進行と相対的な優位性
「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」に基づき千葉市の人口推移を調べると、2020年の974,951人をピークに減少局面に入り、2030年には959,376人、2050年には897,073人となることが予測されています。この推計上では2020年がピークとされていましたが、千葉市が毎月発表する人口では、2026年1月1日現在で987,583人に達し、依然微増傾向が続いています。しかし、全国的な少子高齢化により、市民人口が100万人に達する前に減少に転じる可能性は高いと予想されます。

しかし、千葉県全体と比較すると、千葉市の人口減少速度は緩やかです。2020年を100とした場合、2050年の人口指数は県全体が90.5であるのに対し、千葉市は92.0を維持する見通しであり、県内における千葉市の重要性は相対的に高まっていくと考えられます。
(2)「人口ダム」機能と地域間連携の必要性
千葉市が千葉県全体の「人口ダム」機能を果たしていることは、千葉市の人口統計からも明らかです。令和6年中の県内他都市との転入出数データによれば、千葉市への転入者の44.5%は県内他市町村からであるのに対し、転出者は40.3%でした。特に市原市、船橋市、市川市などの近隣自治体との結びつきが極めて強いことから、千葉市と千葉県内の自治体、千葉市の近隣自治体と結びつきが非常に強いという特徴は、当プラットフォーム設立当時と変わらないことがわかります。
(3)子育て世代・若年層の流入超過
特筆すべき強みは、全国トップクラスの転入超過数です。千葉市は「0~9歳」では全国3位(政令市の中では1位)、「30~49歳」では全国1位を記録しており、首都圏政令市の中で、唯一、子育て世代を含む全世代で転入超過になっています。これは、「生活の場」としての千葉市の魅力の表れであり、将来的な教育需要や子育て世代を対象とした事業のポテンシャルの高さ、言い換えれば、「千葉市が生活しやすい街であることのあらわれ」だと言えます。

ところで、千葉県は「千葉県総合計画」の中で県内を6つのゾーンに分けていますが、このゾーン毎に住民基本台帳人口(2025年4月1日現在)をもとに18歳人口の推移を調べると、千葉県全体では向こう18年間で62.2%まで減少するものの、千葉市を含む「東葛・湾岸ゾーン」では67.2%の水準に留まることが見込まれています。一方、九十九里ゾーンでは46.9%、香取・東総ゾーンでは43.3%、南房総・外房ゾーンでは41.5%まで減少することが見込まれています。

また、千葉県の分析では、
▶東葛・湾岸ゾーン、印旛ゾーン、内房ゾーンは、「自然減だが社会増となっている地域」、香取・東総ゾーン、九十九里ゾーン、南房総・外房ゾーンは、「自然減かつ社会減となっている地域」に二分されている。
▶香取・東総ゾーン、九十九里ゾーン、南房総・外房ゾーンを含め、県内の全てのゾーンで、外国人については、社会増となっている。
▶東京23区との転出・転入数の推移では、2019年までは東葛・湾岸ゾーンを除くゾーンで転出超過だったが、2021年には香取・東総ゾーンを除く全てのゾーンで転入超過に転じた。
と説明されています。
このように、千葉市における当プラットフォームの取り組みを推進していく上では、千葉市だけでなく、千葉県全体の人口動態にも注目していくことが必要だと言えます。
(4)職住近接型都市としての産業構造
千葉市と近隣自治体との結びつきの強さは、通勤・通学の状況からも見てとれます。
「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」のデータによると、千葉市から東京23区に通勤・通学している者(15歳以上)の割合は18.7%ですが、千葉市民の36.0%が千葉市内に通勤・通学しています。また、千葉市の近隣自治体から千葉市に通勤・通学をしている15歳以上の割合は、四街道市で29.0%と高く、以下、市原市で16.9%、東金市で12.6%、茂原市で12.5%と続きます。一方、京成線や東葉高速線により千葉駅を経由せずとも都心に移動ができる佐倉市や八千代市から千葉市に通勤・通学する者の割合は、各市の全ての通勤・通学者のうち10%を下回っています。

なお、このデータを15歳以上の「通学者」に絞って調べると、概ね「通勤・通学者」とほぼ同様の傾向が見られますが、佐倉市、八千代市から千葉市に通学をしている者の割合がやや増えています。
「千葉都民」という呼称に象徴されるベッドタウン的な側面がある一方で、千葉市民の36.0%が市内で就業・就学しており、東京23区への流出(18.7%)を大きく上回っています。千葉市は市全域に産業拠点が広がり、オフィス系業務地域(千葉都心地区、幕張新都心地区、蘇我特定地区など)だけでなく、工業系業務地域(新港地区、千葉土気緑の森工業団地、ちばリサーチパーク、ネクストコア千葉誉田など)等の産業拠点を有する「職住近接」の特性は、産学官連携による地元就職促進において大きな強みです。そして、千葉市域に大学・短期大学が15校も集中をしていることから、高等教育機関が千葉市内で果たすべき役割も大きいと言えます。

ここまでの分析から、私たちが千葉市を「活性化対象地域」とする産学官連携の地域連携プラットフォームを形成し、千葉市や千葉市内の産業界と協働、共創を進めることは、千葉市の「強み」を高めていくためにも、「弱み」に対応・解決していくためにも必要で、そこに高等教育機関が果たす役割と期待も大きいと言えます。
また千葉県内において千葉市のプレゼンスが高いことは、単に千葉市が県庁所在地であるということだけではなく、千葉市における産学官連携の取り組みを通じて、千葉市から千葉県全体にも、取り組みの効果を波及させることが可能だと言えます。この点でも、千葉市域における産学官連携の地域連携プラットフォームの取り組みを推進していくことは、大きな意味を持つことだと言えます。
1-2.千葉市の18歳人口の将来予測と高等教育機関の課題と戦略
(1)18歳人口減少という脅威
千葉県のデータによると、2024年の千葉市の18歳人口は、8,797人でした。この人数を100とした場合、2032年には89.5、2042年には65.1(5,723人)にまで減少していくことが見込まれています。
千葉市では、2029年と2034年に、前年比で若干の増加が見込まれるものの、総じて少子化が止まらないことは明らかです。なお、当プラットフォーム設立時(2018年度)に策定した基本方針では、2040年の18歳人口は6,005人と推計していましたが、本データでは6,345人が見込まれています。

なお、千葉県全体の18歳人口の減少を千葉県のゾーン別に示すと、千葉市を含む東葛湾岸ゾーン以外の減少率の高さが見てとれます。

また、文部科学省「学校基本調査」を元に㈱リクルートがまとめた「リクルート教育総研マーケットレポート2024」によると、18歳人口は千葉県全体でも2036年までに対2024年比で91.3%まで減少する見込みであり、18歳人口が維持される東京都(2036年も100%超)との格差が鮮明になっています。「18歳人口の減少」は、地域を支える高等教育機関にとって存立に関わる致命的な脅威と言えます。
(2)これまでの千葉市域の高等教育機関の取り組み
2026年4月現在、千葉市内には、国立大学1校(千葉大学)、公立大学1校(千葉県立保健医療大学)、私立大学・短期大学11校(植草学園大学、神田外語大学、敬愛大学、敬愛短期大学、淑徳大学、千葉経済大学、千葉経済大学短期大学部、東京情報大学、東都大学、千葉明徳短期大学、放送大学)の計13校のキャンパスが集積しています。
千葉市は、千葉市内にキャンパスが所在する上記13校に加え、帝京平成大学(市原市)、千葉工業大学(習志野市)を加えた15校が参加する「千葉市・大学連絡会議」を毎年定期的に開催し、市の重点施策に関する市・大学間の情報共有や意見交換を行ってきました。この会議では、毎年市長自らが大学学長に向けた施策について説明を行い、これを踏まえた議論を行っています。直近4年間では「千葉開府900年」、「脱炭素化への取組み促進」、「多文化共生の推進」、「こども・若者基本条例の施行を受けて」がテーマとなりました。
また千葉市は、千葉大学、千葉工業大学、淑徳大学、植草学園大学の4大学と包括連携協定を締結するなど、個別に高等教育機関と連携した取り組みを行ってきました。さらに、「千葉県インターンシップ推進委員会」、「ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム」といった産学官連携組織の事業が展開されています。
このように、事業単位では千葉市と大学・短期大学、または産学官連携、個別事業における大学間連携の取り組みは進められてきましたが、教育研究活動や学生募集、就職支援、教職員研修(FD・SD)、IR等の包括的な産学官連携体制は長らく構築されてきませんでした。
そこで、2018年8月に千葉市域(千葉市・市原市)にキャンパスを有する私立大学12校(当時)で構成する地域連携プラットフォーム、「ちば産学官連携プラットフォーム」を設立させました。

ちば産学官連携プラットフォームでは、これまで個々の大学・短期大学が個別に取り組んできた事業の共同実施などを通じて、「競争から共創へ」のスローガンの下、参画校が相互に連携・協働して、地域の発展や課題解決に寄与する取り組みを行っています。その取り組みを客観的に評価する指標の一つとして、文部科学省私立大学等改革総合支援事業(タイプ3:プラットフォーム型)に2018年度から共同で申請し、2025年度までの8年連続で「選定」されています。
(3)千葉市域の高等教育機関の特性と資源(強み・弱み)
前述の通り、千葉市が「千葉市・大学連絡会議」の参加校としている大学・短期大学は、「ちば産学官連携プラットフォーム」参画校を含め、計15校があります。これら15大学・短期大学の有する学部学科に基づき、千葉市域の高等教育の特性と資源を整理します。
①人文社会分野
教育・保育、語学、国際関係、経済、経営、福祉に関する分野では、複数の大学が学部学科を有しており、少子高齢化が進展する中で、有為な人材を輩出することができる基盤があることから「強み」だと言えます。これらの学部学科の教育研究資源を活用していくことにより、今後の少子高齢化や多文化共生にかかる千葉市の課題解決に資する活動の充実が期待されます。
なお文学や法学に関する学部学科は千葉大学にしかなく、この点は「弱み」だと言えます。
②融合領域
いわゆる文系でも理系でもない、リハビリテーションやスポーツ・健康、情報、生活科学に関する分野では、複数の大学が学部学科を有しています。とりわけ近年、AIやデータサイエンスについて学ぶ学部学科を設置する大学が増えるなど、文系・理系を問わず求められるスキルの修得においては、千葉市の課題解決に資する活動が期待される「強み」だと言えます。
③医歯薬学分野、理工分野
医師や看護師等、医療に関わるエッセンシャルワーカーの育成に力を入れている大学が多いのは、「強み」と言えます。一方、理学・工学の学部学科は、千葉大学と千葉工業大学が設置していますが、その他の私立大学はこれらの学部学科を有しておらず、この点は「弱み」だと言えます。
詳しくは、当ホームページの「学術分野マップ」を参照してください。
(4)入学・就職における地域循環の課題
ちば産学官連携プラットフォームでは、千葉市域の高等教育の課題を明らかにするため、共同IR事業を継続的に実施してきました。2025年度の共同IR調査によれば、プラットフォーム参画校のうち放送大学を除く通学課程の2024年度入学者(四年制大学で3,426名、短期大学で498名)のうち、四年制大学7校の62%(2,119名)、短期大学3校の92%(460名)が千葉県内出身者であることが判明しました。この調査は2022年度から実施していますが、傾向に大きな変化はなく、地元密着型の学生確保が行われていることがわかります。

2025年度の共同IR事業では、卒業後の進路選択に関する調査も行いました。この調査では、2025年3月に卒業した学生3,359名のうち、1,396名から回答を得ることができました(回答率41.6%)。
これによると、短期大学では90%が千葉県内に就職していますが、これは4校(植草学園短期大学、敬愛短期大学、千葉経済大学短期大学部、千葉明徳短期大学)の全てに保育人材を育成する学科があることが背景にあると言えます。一方、四年制大学では、36%が千葉県内、46%が東京都内の企業に就職していることが判明しました。2022年度、2023年度調査と比較すると、「卒業後の就職地が千葉ではない」学生が増えている傾向が進んでいます。更に千葉県内企業就職のうち数として千葉市内企業への就職者数を調べたところ、四年制大学では全就職者の9%(千葉県内に就職した者の4分の1)、短期大学では全就職者の36%(千葉県内に就職した者の4割)でした。
注目すべきは、「希望する就職後の居住地」として千葉県内を挙げる者は69%(うち千葉市内を挙げる者は24%)に及ぶのに対し、「実際に千葉県内の企業に就職した学生」は36%に留まっているということです。また「就職先の候補に千葉市内の企業はある(もしくはあった)か」という問いに対し、「ある(あった)」との回答は48%で、「ない(なかった)」の回答(52%)を下回っていました。その理由として突出しているのが、「志望する企業(職場)が千葉市外にあるから」という回答(回答者の46%)というものでした。
このことから、千葉(県・市)が卒業後の学生の居住地として選ばれるためには、「働きたいと思う企業をいかに千葉(県・市)に増やすか」、「いかに的確に、千葉(県・市)の企業情報を学生に伝えていくか」ということが重要だと考えられます。
課題は学生と地元企業との間の「ミスマッチ」であることから、「人手不足」に悩む地元産業界と就職先を都内に求める学生を繋ぐ、産学官連携を強化することが不可欠です。
(5)市民の認知度と期待
では、千葉市民は当プラットフォーム参画校を含む千葉市域の大学・短期大学をどの程度認知し、どのようなことを期待しているのでしょうか。ちば産学官連携プラットフォームでは、2023年度及び2024年度に共同研究調査を実施しました。
この調査は、千葉市在住者の生活や意識の実態を把握し、千葉市に必要な施策の分析・研究を目的として実施したもので、2024年度の調査では、千葉市内在住の20~79歳の男女(住民基本台帳人口より算出した人口構成比に沿って割り付けた)1,000名にインターネット経由でアンケートを行い、897サンプルの回答を得ることができました。
まず大学等の認知度は、「知っている」「よく知らないが、名前を聞いたことがある」を足した数値は、ちば産学官連携プラットフォーム参画校全体では69.7%に達することがわかり、概ね参画校は千葉市民に認知されていると言えます。しかしながら、千葉大学の認知度(95.6%)には遠く及ばないというのが実態ではあります。
また「大学に期待すること」として、「災害時に避難所となってほしい」が72.4%と極めて高く、災害の多様化・激甚化に市民が強い不安を感じていることが推察されます。これに次ぐ「公開講座の開講」(35.9%)、「授業の公開(聴講)」(35.3%)と比べても突出しており、各大学・短期大学が既に設けている公開講座や施設開放といった取り組みが十分に認知・活用されていない可能性を示していることから、安全・安心を求める地域住民のニーズに基づいた新たな連携のあり方を模索する必要があると言えます。

なお、この結果から、各大学・短期大学の学部学科等の専門性を市民が期待をしているとは、必ずしも言えないと推察されます。
